来年からの本拠地、東京ドームで迎えた巨人戦
抑え山口がパーフェクトピッチング、守りもこの日復帰した石川内野手が勢いを見せ惨敗だった
スタジアムに響くファンの罵声、どこからか聞こえる「もうひたすら、水差し野郎と呼んでやりたいような」の声
無言で帰り始める選手達の中、3年前の本塁打王村田は独りグラウンドに立ち尽くしていた
WBCで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の横浜で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「やれやれ、最後までこれか」村田は薄ら笑いを浮かべた
どれくらい経ったろうか、村田ははっと目覚めた
どうやら呆れ果てて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、早く絵理花に行くか」村田は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、村田はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した村田が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにベイスターズの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする村田の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「シュウ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った村田は目を疑った
「す・・・鈴木さん?」 「なんだ村田、居眠りでもしてたのか?」
「な・・・中根コーチ?」 「なんだシュウ、かってに中根さんを引退させやがって」
「石井さん・・・」 村田は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:石井琢 2番:波留 3番:鈴木尚 4番:村田 5番:ローズ 6番:駒田 7番:中根 8番:谷繁 9番:斎藤隆
暫時、唖然としていた村田だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
中根からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する村田、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなった内川が発見され、この日までに吉村と村田に連絡はなく、病院内で静かに息を引き取った
今年の総括とか